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大規模改修を見直す「魅力の再生」とは
従来、我々建築家には「どのような新しい建築の提案ができるのか」が問われてきました。しかし、経済が成熟した現在では「どうすれば造らずに済むか」「どうすれば今ある建築の寿命を延ばすことができるのか」を考え提案することも我々建築家の大きな役割になってきました。
朝日放送の「大改造!!劇的ビフォーアフター」の匠として7度の出演を機会に、新築ばかりではなくリフォーム・大規模改修にも力を入れており、現在も各地で「魅力の再生」プロジェクトを進めてます。
「魅力の再生」とは?
多くのマンションやビルが抱える問題として、経年による老朽化により空室が増え、資産価値もなくなり、売却や解体するケースも少なくありません。ただ、建物の魅力は単に構造や設備などの物理的な性能ばかりではなく、むしろデザインや建物に対する愛着など社会的条件で決まることが多いといえます。
従来の大規模改修では、単に老朽化した外装の仕上げや設備を修繕、修復するというものでした。つまり、これは多額を費やして、数十年前の建築に戻す工事を施していることになります。
その点、「魅力の再生」という考え方では、建物の外観や共用空間を現在のデザインの視点から見直し、建物の魅力を整えるための工事をします。このような魅力の再生により、住民の建物への愛着を育み、個人の財産としてはもちろん、街並みを形成する社会資産としても貢献することにつながるため、建築物の超寿命化や環境負荷の軽減にもつながります。
外観や共用部が魅力的になれば、区分所有部分については、いつでも各個人が手を加えて、魅力ある住宅にリフォームすることが可能になります。
「魅力の再生」の工事内容とは?
それでは、「魅力の再生」プロジェクトで行う具体的な工事内容の例をご紹介します。
【Before】ジュネス大規模改修:築35年の鉄骨ALC、3階建てのマンションです。
【After 外観イメージ】
今回実施する工事では、主に以下の5つのポイントがあります。
➀外観のデザインを一新
階段室をデッキ材で、塀は防雪板で、共に耐久性のある資材で形を整え、外壁はツートンカラーでシンプルに。
➁プライバシー・セキュリティの向上
一般的に1階住戸はプライバシーやセキュリティ的に不利とされています。今回は道路境界沿いに高い塀を設けることにより、バルコニー前の空地を各住戸の専用庭・テラスとして、1階住戸に付加価値を付けます。
③水道設備の改善
受水槽、高架水槽を撤去し、水道本管より直圧式に改修します。受水槽、高架水槽は年に1~2回の清掃が必要ですが、それでも飲み水を衛生的に保つことは難しく、またその清掃管理費も大きな負担となります。
④エントランスに機能を追加
エントランスに門扉を設け、セキュリティを高め、メールコーナー、宅配ボックスを整備します。
⑤省エネ
照明器具をLEDとし、省エネを図ります。
➅空室のリニューアル
今回は1室のみを1Kタイプからワンルームタイプに全面改装します。さらに今後は、2住戸を1住戸としてつなぎ、大きなタイプとするリニューアルも随時進めます。