「思い出の一冊」

「建築家なしの建築」
・バーナード・ルドルフスキー著(鹿島出版会)
全国賃貸住宅新聞に「思い出の一冊」としての取材を受け掲載されました。

私がこの本と出合ったのは、大学を卒業してゼネコンの設計部に在籍しているころでした。… その頃は高度成長期で近代建築が全盛であり、建築家もこぞって新しい建築を求めていました。

私自身も建築とは人工物として自然に対峙するものというイメージがあり、新しい近代的な建築を求めていました。
ところがこの本に出会い、気候や風土に根差した自然発生的な建築の魅力に触れ、シンプルで作為のない建築の美しさに魅了されました。

先人が試行錯誤を重ね、最終的に残った技術や形態には無理や無駄がなく、単体では単純な建築ながら、これらが集合することにより圧倒的な美しさを持ちます。
あるいはその土地、その時代特有の条件により、非常に特異な形態が生まれたりしている例もあります。
是非いつかは実際に自分の目で見てみたいと思い、独立してからは年に数回は海外視察に出かけ、その中のいくつかは実際に訪れています。

現在の日本では必ずしもこのような作られ方が自然とは言えません。工業化や技術も進み、耐震や断熱など要求される性能も時代とともに変わります。
今の日本の技術、手に入れやすい素材で様々な与条件、要求に対応することこそが自然です。

ただ、私はその中でもやはり、人の温もりを感じることができるように、できるだけ自然素材を採用し、一部には手作業の痕跡の残る仕上げを採用します。

また、反対に極端に変形した土地や、特別な厳しい条件があるときなどこそ、それは決して欠点ではなく強い個性だと受け止め、その個性を生かすことにより私なりに個性的な建築を生み出し、それが私の作風となってきたように思います。

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